診療科目

MEDICAL SUBJECTS

一般内科

一般外科

整形外科

歯科

呼吸器科

循環器科

消化器科

肝・胆・膵科

腎泌尿器科

内分泌科

腫瘍科

皮膚科

神経科

免疫疾患科

生殖器科

眼科

一般内科(総合診療科)

小動物の一般内科(総合診療科)は、犬や猫などのペットに起こる幅広い内科的な病気の診断・治療・管理を行う、いわば「かかりつけ医」のような分野です。
症状の原因がはっきりしない場合や、複数の臓器に関わる病気にも対応します。

主な診療内容

分野主な内容
呼吸器咳、くしゃみ、鼻水、呼吸困難 など
神経系けいれん、ふらつき、意識障害 など
消化器嘔吐、下痢、食欲不振、便秘 など
心臓・循環器心雑音、咳、運動不耐性、失神 など
腎泌尿器頻尿、血尿、おしっこが出ない など
内分泌・代謝糖尿病、副腎疾患、甲状腺機能異常 など
血液・免疫貧血、出血傾向、自己免疫疾患など
感染症ウイルス、細菌、真菌などによる疾患

主な検査

  • 一般身体検査(聴診・触診・視診など)
  • 血液検査・尿検査・便検査
  • レントゲン・超音波検査
  • 内視鏡検査(消化器など)
  • ホルモン検査、感染症検査

目的

  • 全身状態の把握
  • 症状の原因特定と治療
  • 病気の予防と早期発見
  • 高齢動物の健康管理(シニアケア)

こんなときに受診

  • なんとなく元気がない
  • 食欲が落ちた、体重が減った
  • 咳や吐き気、下痢が続く
  • 定期健診や健康診断をしたい

一般外科(軟部外科)

一般外科(軟部外科)が対応する主な分野

  • 一般外科
    • 去勢・避妊手術(不妊手術)
    • 異物摘出(飲み込んだおもちゃなど)
    • 帝王切開ヘルニア整復など
  • 軟部外科
    • 胃腸肝臓膀胱などの臓器手術(例:腫瘍摘出、膀胱結石除去)

主な手術の例

  • 避妊・去勢手術
  • 消化管異物摘出術(誤飲・誤食など)
  • 腫瘍摘出術(良性・悪性)
  • 子宮蓄膿症手術
  • 胆嚢摘出術膀胱結石摘出

手術の流れ(一般的な例)

  1. 診察・検査(身体検査、血液検査、レントゲン、エコーなど)
  2. 術前準備(絶食・麻酔前投薬)
  3. 全身麻酔下での手術
  4. 術後管理・入院(当日〜数日)
  5. 抜糸・経過観察

飼い主様が知っておきたいこと

  • 術前検査や麻酔のリスク説明をしっかり聞くこと
  • 術後ケア(傷口管理、カラー装着、安静)がとても大事
  • 高齢動物や持病のある子は慎重な対応が必要

整形外科

主な対象

  • (特に犬が多い)
  • ウサギ小動物にもみられる

対象となる疾患・ケガ

  • 骨折
  • 脱臼
  • 靱帯損傷(例:前十字靱帯断裂)
  • 股関節形成不全
  • 膝蓋骨脱臼(パテラ)
  • 椎間板ヘルニア
  • 成長障害先天性奇形
  • 腫瘍による骨の変形や破壊

主な治療法

  • 手術(プレート固定、ピン・スクリュー、人工関節など)
  • 保存療法(ギプス・副木、運動制限、内科治療)
  • リハビリテーション(レーザー治療なども含む)

治療方法

当院でも専門の先生を招致し、整形外科や脊椎外科の手術も対応可能です。また、対応困難な症例や緊急性を要する場合は、専門の整形外科施設や二次診療施設へ紹介することもございます。

歯科

主な対象動物

  • 犬・猫
  • うさぎ、モルモット、小型齧歯類などの小動物(特に草食系)も歯のトラブルが非常に多い

主な歯科疾患とトラブル

  • 犬・猫に多いもの
    • 歯周病(歯肉炎)←最も多い
    • 歯石の蓄積・口臭
    • 乳歯遺残(特に小型犬)
    • 歯の破折・欠損
    • 根尖周囲病巣(顔が腫れる)
    • 口内炎(特に猫)
    • 不正咬合(噛み合わせの異常)
    • 口腔内腫瘍
  • 小動物(うさぎなどの草食動物)に多いもの
    • 歯の過長(伸びすぎ)
    • 不正咬合(食欲不振、よだれ、涙目の原因に)
    • 口腔内腫瘍(ハリネズミに多い)

主な検査・診断

  • 口腔内の視診・触診
  • 歯科用レントゲン(歯根や顎骨の状態を確認)
  • 麻酔下での歯のスケーリングや検査
  • 必要に応じてCT検査(顔面や顎の評価)

主な治療内容

  • 歯石除去・スケーリング
    • 全身麻酔下で実施
    • 超音波スケーラー+研磨(ポリッシング)で歯をきれいに
    • 歯周ポケットの洗浄も行う
  • 抜歯
    • 重度の歯周病、破折、乳歯遺残などに対して
    • 麻酔が必要、術後の痛み止めも使用
    • 猫の難治性口内炎
  • 内科的処置
    • 歯肉炎や口内炎には抗菌薬・消炎鎮痛剤・サプリなど
    • 猫の難治性口内炎ではステロイドや免疫療法も
  • 不正咬合の矯正・カット
    • うさぎなどは定期的な歯のケアが必要なこともある

飼い主様ができる予防ケア

  • 毎日の歯磨き(子犬・子猫のうちから習慣に)
  • 歯磨きシートやデンタルガムの使用
  • 定期的な歯科健診(半年〜1年ごと)
  • 高齢動物や小型犬は特に要注意!

歯科のポイント

  • 犬猫の3歳以上の約8割が歯周病を抱えていると言われる
  • 歯周病は心臓・腎臓・肝臓など他の臓器に悪影響を及ぼすことも
  • 猫の「口が痛くて食べられない」は口内炎や吸収病変が原因のことも

呼吸器科

対象となる主な病気

  • 上部気道(鼻・咽喉)
    • 鼻炎、慢性鼻炎
    • 鼻腔腫瘍
    • 軟口蓋過長症(短頭種症候群の一部)
    • 鼻腔内腫瘍(高齢動物にみられることが多い)
  • 下部気道(気管・気管支・肺)
    • 気管虚脱(小型犬に多い)
    • 気管支炎(慢性・アレルギー性など)
    • 肺炎
    • 気胸・肺水腫
    • 肺腫瘍
    • 胸水貯留(心疾患や腫瘍性疾患などが原因)

主な検査・診断法

  • 胸部レントゲン検査
  • CT検査(より精密に診断)
  • 気管支鏡検査(大学病院や専門科のある診療施設)
  • 血液検査・酸素飽和度の測定
  • 痰や洗浄液(BAL)の検査による病原体の検出

主な治療法

  • 薬物治療(抗生物質、ステロイド、気管支拡張薬など)
  • 酸素吸入(急性期管理)
  • 手術(腫瘍切除や短頭種症候群の矯正[軟口蓋切除]など)
  • ネブライザー治療(吸入療法)
  • 胸水や気胸に対するドレナージ処置

特に注意が必要な犬種

  • フレンチブルドッグパグシーズーボストンテリアなどの短頭種は、呼吸器トラブルが起きやすい
  • 老犬では喉頭麻痺や気管虚脱に注意

飼い主様が知っておくと良いこと

  • 咳が続く」「呼吸が苦しそう」「ゼーゼー・ガーガー音がする」などは受診サイン
  • 呼吸困難(舌の色が紫色、開口呼吸[犬以外])は緊急疾患の可能性あり、すぐ病院へ
  • 慢性疾患も多く、継続的なケアが必要なことも

循環器科

対象となる主な臓器・器官

  • 心臓(心筋・弁膜・心内膜・心膜など)
  • 血管(動脈・静脈)
  • 肺循環や体循環に関係する器官

主な対象疾患

  • 先天性心疾患(例:心室中隔欠損、動脈管開存症など)
  • 後天性心疾患(例:僧帽弁閉鎖不全症[犬]、肥大型心筋症[猫]など)
  • 不整脈
  • 高血圧
  • 心膜疾患(例:心嚢液貯留)
  • 肺高血圧症 など

みられる症状

  • 呼吸困難
  • 運動不耐性(疲れやすい)
  • 失神
  • 腹水浮腫
  • チアノーゼ(舌や歯茎が青紫になる)

主な検査方法

  • 聴診(心雑音の確認)
  • 心電図(ECG)
  • レントゲン(X線)検査
  • 心エコー(超音波)検査
  • 血圧測定
  • 血液検査(心臓バイオマーカーなど)

治療方法

  • 内科的治療(投薬:利尿薬、ACE阻害薬、強心薬など)
  • 外科的治療(先天性疾患・僧帽弁閉鎖不全症に対する手術など)
  • 食事療法
  • 生活管理(栄養管理など)

消化器科

主に診る臓器・器官

  • 口腔、咽頭、食道
  • 胃・小腸・大腸(結腸・直腸)
  • 肝臓、胆嚢、膵臓(※肝胆膵科と連携)
  • 肛門周囲・肛門腺 など

主な症状と病気

  • よくある症状
    • 嘔吐(慢性・急性)
    • 下痢・血便
    • 食欲不振・体重減少
    • お腹が痛そう・張っている
    • 便秘・うんちが出にくい
    • よだれが多い、吐き戻し
  • 主な疾患例
    • 胃腸系
      • 胃炎・腸炎(急性・慢性)
      • 異物誤飲による消化管通過障害、中毒
      • 炎症性腸疾患(IBD)
      • 腫瘍(消化器型リンパ腫、腺癌など)
      • 便秘・巨大結腸症(特に猫)
      • 直腸脱・肛門周囲疾患
    • 肝臓・胆嚢・膵臓系(肝胆膵)
      • 胆管肝炎・肝リピドーシス(猫)
      • 胆泥症・胆嚢粘液嚢腫
      • 膵炎(犬猫ともに多い)
      • 膵外分泌不全(EPI)

主な検査内容

  • 身体検査・聴診・触診
  • 血液検査(肝酵素、各種診断マーカーなど)
  • 糞便検査
  • レントゲン・エコー(超音波)検査
  • 内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)

主な治療法

  • 対症療法(吐き気止め、整腸剤、下痢止めなど)
  • 食事療法(消化器疾患用の療法食)
  • 抗生物質やステロイド(IBDなどの免疫関連疾患に)
  • 点滴治療(脱水や電解質異常の補正)
  • 内視鏡や外科手術(異物除去や腫瘍切除など)

消化器科の役割

  • よくある症状(吐く・下痢する)に対応する最前線
  • 慢性疾患の長期管理や栄養サポートも担当
  • 必要に応じて内視鏡・手術・CT検査などを実施
  • 肝胆膵・内分泌・腫瘍科と密接に連携

飼い主様が気をつけたいポイント

  • 「ただの吐き気」でも慢性化や深刻な病気の可能性あり
  • 「ごはん食べない・痩せる」は消化吸収のトラブルかも
  • 慢性の下痢・便秘は腸の病気やホルモン異常のことも
  • 誤飲が疑われるときはすぐ受診が鉄則

肝・胆・膵科

主な対象臓器

  • 肝臓(かんぞう)
  • 胆嚢(たんのう)
  • 胆管(たんかん)
  • 膵臓(すいぞう)

主な病気・症状

  • 肝臓
    • 肝炎(急性・慢性)
    • 肝硬変
    • 肝性脳症(アンモニアの蓄積による神経症状)
    • 肝リピドーシス(猫に多い脂肪肝)
    • 門脈体循環シャント(PSS)
    • 肝腫瘍(良性・悪性)
    • 肝葉捻転(ウサギ)
  • 胆嚢・胆管
    • 胆泥症(たんでいしょう)
    • 胆嚢粘液嚢腫(胆嚢がゼリー状になる)
    • 胆石症
    • 胆管閉塞胆管炎
  • 膵臓
    • 膵炎(急性・慢性)
    • 膵外分泌不全(EPI)
    • 膵臓腫瘍(インスリノーマ[フェレットに多い]など)

主な検査

  • 血液検査(肝酵素・各種診断マーカー・総胆汁酸などの評価)
  • 超音波検査(エコー)
  • CTやMRI(詳細な評価や手術前診断)
  • 肝臓の生検
  • 糞便検査(膵外分泌不全の評価)

主な治療法

  • 内科療法(点滴・抗炎症薬・肝保護剤・消化酵素補充・食事療法など)
  • 外科治療(胆嚢摘出、シャント血管手術など)
  • 食事療法(低脂肪・高消化性などの療法食が重要)
  • 入院治療(急性膵炎などは命に関わることも)

飼い主さんが気をつけたい症状

  • 食欲不振・元気がない
  • 嘔吐・下痢
  • 黄疸(粘膜の色・白目が黄色い、尿の色が濃い黄色〜オレンジ色)
  • お腹の痛み(背中を丸めている、祈りのポーズ)
  • 食べてはいるが痩せてきた、筋肉が落ちた
  • 行動がぼーっとしている(肝性脳症の疑い)

腎泌尿器科

担当する主な臓器・器官

  • 腎臓(左右)
  • 尿管
  • 膀胱
  • 尿道
  • 前立腺(オスのみ)

主な症状と疾患

  • よくある症状
    • おしっこの量や回数の異常(多い/少ない)
    • 血尿、濁った尿
    • トイレに頻繁に行くが出ていない
    • 排尿時に鳴く、痛がる
    • 水を大量に飲む
    • 嘔吐、元気消失、食欲不振(腎不全の可能性)
  • 主な疾患例
    • 腎臓疾患
      • 慢性腎臓病(CKD):特に高齢猫に多く、徐々に進行
      • 急性腎障害(AKI):中毒、感染、脱水、尿管・尿道閉塞などが原因
      • 腎盂腎炎:腎臓まで広がる感染症
      • 腎結石・水腎症:尿管の詰まりや尿流の障害
    • 膀胱・尿道の疾患
      • 膀胱炎(感染性/特発性[猫に多い])
      • 膀胱結石・尿道結石(結晶含む)・尿管結石(猫に多い)
      • 特発性膀胱炎(猫に多い)
      • 尿道閉塞(特に雄猫):命に関わる緊急疾患
      • 膀胱腫瘍(移行上皮癌など)
    • 前立腺疾患(犬・オス)
      • 前立腺肥大(加齢性:未去勢の場合は確実に起こる)
      • 前立腺炎前立腺嚢胞前立腺腫瘍

主な検査項目

  • 尿検査(比重・pH・蛋白・血尿・沈査)
  • 血液検査(BUN・クレアチニン・電解質など)
  • 腹部レントゲン・超音波検査(結石・腫瘍など確認)
  • 尿路造影検査(造影剤を使って詰まりや形態確認)
  • 尿培養・感受性試験(感染性膀胱炎の菌種確認)

主な治療法

  • 内科的治療
    • 点滴治療(脱水補正)
    • 食事療法(腎疾患用、結石予防用)
    • 抗生物質消炎剤鎮痛薬
  • 外科的・処置的治療
    • カテーテルによる排尿補助
    • 尿道ステント設置(腫瘍性閉塞など)
    • 結石摘出手術(膀胱切開、尿道切開)
    • 尿管バイパス形成手術(SUBシステムなど)
    • 腫瘍の摘出または緩和治療

腎泌尿器科の役割

  • 慢性疾患と緊急疾患の両方に対応
  • 内科的治療と外科的介入を連携して実施
  • 長期的なモニタリングが必要なケースも多く、生活の質(QOL)の維持がカギ

飼い主様に知っておいてほしいこと

  • 猫の慢性腎臓病はサイレントキラー:初期症状が少ないため早期発見が大事
  • 雄猫の尿道閉塞は緊急対応:放置は命の危険
  • 水をよく飲む/おしっこが多いのは腎疾患のサインかも
  • 食事療法定期検査で病気の進行を抑えられることが多い

内分泌科

内分泌科は、ホルモンの異常によって引き起こされる病気の診断・治療を専門とする分野です。ホルモンは、体内のさまざまな機能(代謝、成長、繁殖、ストレス反応など)を調整する重要な物質です。

主な対象疾患

  • 糖尿病
    • 特に犬や猫で多くみられます。
    • インスリンの分泌不足や抵抗性により血糖値が高くなる病気。
  • 甲状腺疾患
    • 犬:甲状腺機能低下症(元気がない、皮膚病、体重増加)
    • 猫:甲状腺機能亢進症(食欲はあるが体重減少、活動過多)
  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
    • 犬によくみられる。
    • 副腎から過剰にコルチゾールが分泌される。
  • 副腎皮質機能低下症(アジソン病)
    • コルチゾールやアルドステロンの分泌が不十分。
  • 副腎疾患(腫瘍)
    • フェレットによくみられる。
    • 副腎から過剰に性ホルモンが分泌され、脱毛症やオスでは前立腺肥大による排尿障害がみられる。
  • 性ホルモンの異常
    • 発情異常、不妊、偽妊娠など。
  • 成長ホルモンの異常
    • 先天性の成長ホルモン不足、下垂体腫瘍など。

主な診断方法

  • 血液検査(ホルモン値測定)
  • 視診などによる特徴的な症状
  • 尿検査
  • 画像診断(超音波、X線、MRIなど)
  • ホルモン刺激・抑制試験

治療法

  • ホルモン補充(例:インスリン、甲状腺ホルモン)
  • ホルモン抑制薬の投与
  • 食事療法
  • 外科的処置(腫瘍が原因の場合など)

腫瘍科

対象となるできもの

(結節・腫瘤)

  • 良性腫瘍(例:脂肪腫、皮脂腺腫など)
  • 悪性腫瘍(例:リンパ腫、骨肉腫、乳腺癌、悪性黒色腫など)
  • 非腫瘍性病変(例:炎症性肉芽腫、嚢胞、過形成など)

診断方法

  • 視診・触診
  • 血液検査・生化学検査
  • X線超音波CTMRI
  • 細胞診(FNA)、組織生検(病理検査)

主な治療法

  • 外科手術: 腫瘍を切除
  • 化学療法: 抗がん剤の使用
  • 放射線治療: 一部の専門施設で実施
  • 免疫療法・分子標的療法: 新しい治療法として注目

治療の選択

動物の種類・年齢・腫瘍の種類・ステージ(進行度)・QOL(生活の質)を総合的に考慮し、飼い主様のご意向なども含めてご相談の上で決定します。

飼い主様が知っておきたいこと

  • 早期発見がカギ: しこりや行動の変化を見逃さない
  • セカンドオピニオンも視野に: 納得できる治療法を探す
  • 完治が難しいケースも: 緩和ケアやQOL向上を目指す治療も大切

皮膚科

対象となる主な症状・疾患

  • 皮膚のかゆみ(アトピー、ノミアレルギー、外部寄生虫など)
  • 脱毛(内分泌疾患、感染症、自己免疫疾患)
  • 赤み・湿疹(細菌性皮膚炎、真菌感染など)
  • フケ・皮膚の厚み(外部寄生虫[ウサギ]、角化異常症など)
  • 耳の異常(外耳炎、中耳炎、耳ダニ)
  • 皮膚の腫瘍・しこり
  • 慢性的な皮膚トラブル

よくみられる疾患の例

疾患名特徴
アトピー性皮膚炎アレルギーが関与。犬(柴犬)に多く、かゆみ・赤みが出る
膿皮症細菌感染による皮膚炎。かゆみ、脱毛、膿を伴うことも
マラセチア皮膚炎酵母菌(マラセチア)による感染症。特有の臭い
疥癬ヒゼンダニによる感染症。激しいかゆみ
外耳炎特に垂れ耳やアレルギーの犬に多く、耳垢・臭い・かゆみ

診断方法

  • 視診・触診
  • 皮膚掻爬(スクレーピング)(顕微鏡検査)
  • アレルギー検査(血液検査)
  • 培養検査(細菌・真菌)
  • 皮膚の生検(組織をとって病理組織検査)
  • ホルモン検査(内分泌疾患を疑う場合)  など

治療方法

  • 抗菌薬・抗真菌薬(内服・外用)
  • ステロイド免疫抑制剤(アトピーなど)
  • 除去食試験(食物アレルギー)
  • 定期的な薬浴(シャンプー療法)
  • 外用薬や保湿剤によるスキンケア
  • 対症療法(かゆみ止め、抗ヒスタミン薬など)

神経科

神経科(神経科・神経内科)は、動物の神経系に関連する病気や異常を診断・治療する専門分野です。神経系とは、脳、脊髄、末梢神経、筋肉を含む全体のネットワークで、体の動きや感覚、意識、行動などをコントロールしています。

神経科の主な対象

  • てんかんや発作
  • ふらつき、歩行障害
  • 首や背中の痛み
  • 麻痺(前肢・後肢の動きが悪いなど)
  • 意識障害、昏睡状態
  • 行動の異常(性格の変化、方向感覚の喪失)
  • 顔面神経麻痺や斜頸(首が傾く)
  • 脊髄疾患(椎間板ヘルニアなど)
  • 神経筋疾患(ミオパチー、重症筋無力症など)

診断に使われる検査

  • 神経学的検査(歩き方、反射、痛覚などのチェック)
  • MRI・CT検査(脳や脊髄の構造を画像で確認)
  • 脳・脊髄液検査(脳や脊髄の炎症や感染を調べる)
  • 血液検査・ホルモン検査
  • 筋電図(EMG)や神経伝導検査

治療法

  • 薬物療法(抗てんかん薬、ステロイド、免疫抑制剤など)
  • 外科手術(椎間板ヘルニアの手術など)
  • リハビリ・理学療法
  • 食事療法やサプリメント(特定の代謝異常に対して)

免疫疾患科

主に診る疾患の種類

  1. 自己免疫性疾患(自己免疫反応)
    自分の体を異物と誤認して攻撃してしまう病気 ↓
    • 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
      重度の貧血、黄疸、元気消失など
    • 免疫介在性血小板減少症(IMTP)
      出血斑、鼻血、歯茎出血など
    • 免疫介在性多発関節炎
      関節の腫れ・痛み、発熱、歩行異常など
    • 天疱瘡、エリテマトーデス(皮膚疾患)
      皮膚のただれ、かさぶた、脱毛など
    • 自己免疫性甲状腺炎(甲状腺機能低下症)
      皮膚症状、寒がり、元気低下など
  2. アレルギー性疾患(過敏反応)
    免疫が過剰に反応してしまうことで発症 ↓
    • アトピー性皮膚炎(かゆみ、湿疹、脱毛)
    • 食物アレルギー(皮膚症状・消化器症状)
    • ワクチンアレルギー、薬剤アレルギー
    • 蜂・ダニ・植物などに対するアレルギー反応
  3. 免疫不全・免疫低下
    • ウイルス感染による免疫抑制(猫エイズ=FIV、猫白血病=FeLV など)
    • 高齢や持病による免疫力低下

主な検査方法

  • 血液検査(CBC、生化学、凝固系)
  • 自己抗体検査(クームス試験など)
  • 骨髄検査(IMHA/IMTPで必要なことも)
  • 関節液検査(免疫介在性多発性関節炎)
  • 皮膚の生検(免疫介在性皮膚疾患)
  • アレルギー検査(血液検査など)
  • ウイルス検査(猫FIV・FeLVなど)

主な治療法

  • 免疫抑制剤(ステロイド、シクロスポリンなど)
  • 支持療法(点滴、輸血、抗生物質、栄養管理など)
  • 食事療法(アレルギー・腸炎に対応)
  • 環境整備(アレルゲン除去、ストレス軽減)
  • 長期的なモニタリング・再発管理

免疫疾患科の特徴

  • 診断が難しいことが多く、除外診断や経過観察が必要
  • 治療は長期管理が前提(再発しやすいため)
  • 他の臓器のトラブルとも密接に関係
  • ステロイドなどの薬剤は副作用もあるため、慎重なバランス調整が必要

生殖器科

小動物の生殖器科は、生殖器に関する病気の診断・治療・予防、および妊娠・出産のサポートなどを行う獣医療の診療分野です。

主な診療内容

  • メス
    • 避妊手術(卵巣・子宮の摘出)
    • 子宮や卵巣の病気(例:子宮蓄膿症、子宮腫瘍[ウサギ・ハリネズミに多い])
    • 妊娠の管理分娩サポート帝王切開
  • オス
    • 去勢手術(精巣の摘出)
    • 精巣・前立腺の病気(例:精巣腫瘍、前立腺膿瘍など)
    • 潜在精巣(腹腔内や皮下組織の精巣)
  • 共通
    • 性器の腫瘍・奇形
    • 性ホルモン関連の検査や管理

主な検査・処置

  • 超音波検査(妊娠や病変の確認)
  • 血液・ホルモン検査
  • 細胞診
  • 外科手術(避妊・去勢、腫瘍摘出、帝王切開など)

眼科

主な対象部位

  • 角膜結膜虹彩瞳孔水晶体網膜視神経など
  • まぶた涙腺も含む

主な眼科疾患

  • 外眼部・前眼部
    • 結膜炎
    • 角膜潰瘍・角膜炎
    • 瞬膜突出(チェリーアイ)
    • 眼瞼腫瘍・眼瞼内反/外反
    • ドライアイ(乾性角結膜炎)
  • 眼球内部
    • 白内障
    • 緑内障(眼圧上昇)
    • ぶどう膜炎
    • 網膜剥離・変性
    • 水晶体脱臼
  • その他
    • 外傷による眼の損傷
    • 先天性奇形
    • 視覚障害失明の原因疾患

主な検査・診断方法

  • スリットランプ検査(前眼部の詳細確認)
  • 眼圧測定(緑内障などの診断)
  • フルオレセイン染色(角膜の傷を確認)
  • 涙液量検査(ドライアイの評価)
  • 眼底検査・超音波検査
  • 網膜の電気生理検査(ERG)(視覚機能評価)

主な治療法

  • 点眼薬治療(抗生物質、抗炎症薬、眼圧コントロール薬など)
  • 内服薬
  • 外科手術(白内障手術、チェリーアイ整復、眼球摘出など)
  • 定期的なモニタリング(進行性疾患の場合)

注意が必要な犬種

  • シーズーパグフレンチブルドッグペキニーズなどの短頭種は眼が突出しており、角膜損傷や外傷を受けやすい
  • 柴犬などは緑内障になりやすい傾向

飼い主様が知っておくと良いこと

  • 目ヤニが多い」「目を細めている」「白く濁っている」「ぶつかりやすい」などは眼科受診のサイン
  • 早期の治療で視力の温存が可能なケースも
  • 点眼治療は根気強く継続が必要な場合が多い